【質問】廃棄物が不適正処理された土地の取得後に、支障等が生じた場合の責任について

【質問】

産業廃棄物が処理されていると承知の上で取得した土地において、取得後に当該廃棄物に起因する汚染が起こった場合の責任は、当該土地を取得した者にあるのか。

【回答】

廃棄物処理法では、処分状況を知りつつ土地を購入し、処理基準に違反する状態を継続させた土地所有者については、生活環境の保全上の支障の除去等の責任が問われることがある。

【解説】

①廃棄物に起因して生活環境の保全上支障が生じる又は生じるおそれがある場合は、措置命令発出の対象となる。
②措置命令の要件としては、都道府県知事は処理基準に適合しない産業廃棄物の処分が行われた場合において、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、廃棄物処理法に基づき

1処分を行った者

2委託基準違反による委託を行った者

3管理票義務違反の者

4違反行為を要求し、依頼し、若しくは唆し、又はこれらの者が当該処分等をすることを助けた者

に対し、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができる。

行政処分の指針では、4の対象者として、「処分状況を知りつつ土地を購入し特段の理由な く違反状態を容認・放置したものなど、処理基準違反の状態を容易にし、又は継続した者も「当該処分等をした者又は当該処分等をすることを助けた者に該当し得る」としている。

行政処分の指針の考え方からすれば、廃棄物の不適正処理があった最終処分場と知りつつ当該土地を取得した者、不法投棄された土地であることを知りつつ当該土地を取得した者などについても、当該土地で生活環境の保全上の支障等が生じた場合は責任があるものと考えられる。

【参考】

民法上の規定

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第717条
1 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 

-民法第717条の考え方-

現土地所有者である者が土地に手を加えた(工事着手)ために出現した廃棄物により、本件土地周辺の住民等に被害を与えてしまった場合、「土地の工作物の設置又は保全に瑕疵がある」と して、民法717 条にいう「土地工作物の所有者の責任」が問題となり、損害賠償責任を追求さ れる可能性がある。この場合の「土地工作物」とは、判例上、土地上に構築された建造物等のみならず、単に掘削された地勢、地形までも含めて広義に解釈さている(福岡地判昭和53年.3月 28日)。