【質問】施設の使用権原を証明する書類について

【質問】

産業廃棄物収集運搬業の許可申請において、事業の用に供する施設(駐車場)の所有権・使用権原を証明する書類を添付しなければならないが、以下の事例について御教示願いたい。

①申請者Aは、権利能力無き社団であるB区から土地を借り受け、事業の用に供する施設として申請を行いたい。

②B区は、権利能力無き社団であり、過去の判例によってB区或いはB区代表者名義による登記ができなかった。

③そのため、昭和33年当時役員であったC他5名の個人名義によって共同で登記を行った。

④登記を行った者は全て死亡している。

⑤現在、B区は今後法人化を目指しており、法人登記に向けて手続きを進めているが、相続人全員の把握が出来ていないため、登記変更手続きは未了である。

【回答】

使用権原を証明するために次の資料を添付する必要がある。

① 土地登記簿

② 土地賃貸借契約書

③ 所有事実を記載した申述書

④ 権利能力無き社団の役員等構成員であったことを確認する資料

⑤ 所有・管理を裏付ける書面(固定資産税納税通知書、領収書等)

などが必要である。

今回の事例では、④の資料が現存していないため、③にその旨を記載させ、①、②、③、⑤の資料をもって所有権原を確認されたい。

【解説】

廃棄物処理業の許可申請の際には、廃掃法施行規則第9条の2第2項第3号において、「申請者が全豪に掲げる施設の所有権を有すること(申請者が所有権を有しない場合には、使用する権原を有すること)を証する書類)」を添付することと規定しており、土地登記簿によって所有者を確認し、申請者と所有者が異なる場合には、土地使用承諾書或いは土地賃貸借契約書などの使用権原を証する書類を添付することにより使用権原の確認を行っている。

今回の事例では、登記簿上の登記名義人はC他5名であり、土地賃貸借契約書の契約人はB区であることから、B区が事実上の土地所有者であることが確認できなければ、申請者は当該土地の使用権原があると認められないことになる。そこで、B区が土地の事実上の所有者であることを確認する必要がある。

まず、登記簿にC他5名で共有登記を行った理由については、申述書にも記載されているが、権利能力無き社団(以下、「社団」という。)の所有する土地については、社団或いは社団の代表者の肩書きを付した代表者個人の名義によって登記することができないとする最高裁判例が示されており、登記実務の運用として、判例が示される以前より同様の取り扱いであった。そのため、B区は昭和33年当時役員である個人複数名によって登記が行われたものであるから、登記簿上の所有者と実際の所有者が異なることは判例上そのようにならざるを得ない。申述書の内容と判例は、社団が登記できないかったという事実に相違するところはない。

次に、登記簿上は土地を所有していることができない社団が、当該土地を所有或いは管理しているか実態を確認しなければならない。今回の事例では、B区の所有・管理実態の把握の為、土地の固定資産税に着目する。土地に係る固定資産税の納税義務者は、登記簿または土地補充課税台帳に所有者として登記または登録されている人であり、固定資産税の納税義務者及び納付者を確認することによって、所有・管理の実態を確認することが可能である。提出された納税通知書には、登記されたC他5名が記載されているが、相続人が支払った事実は無く、支払を行ったのはB区であることが領収書から確認でき、B区が所有・管理を行っているとみなすことができる。

よって、土地登記簿、土地賃貸借契約書、事実関係を記載した申述書、固定資産税の納税通知書及び領収書をもって、申請者は土地の使用権原を有していると判断してよい。

【参考】

最高裁判例 事件番号昭和45(オ)232 裁判年月日昭和47年06月02日

裁判要旨 権利能力無き社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団の権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書きを付した代表者個人名義の登記をすることは、許されないものと解すべきである。

 

地方税法

(固定資産税の納税義務者等) 

第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者(質権又は百年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者又は地上権者とする。以下固定資産税について同様とする。)に課する。 

2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者(区分所有に係る家屋については、当該家屋に係る建物の区分所有等に関する法律第二条第二項 の区分所有者とする。以下固定資産税について同様とする。)として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録されている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第三百四十八条第一項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。